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刃の長さ33センチ、重量約1キロ。
持ち歩けば銃刀法違反で間違いなく捕まる刃物である。
畳まれた麺帯の上に駒板を載せて切っていく訳だが、
当店の蕎麦の幅は1,2mから1,3m。
寒い季節は温蕎麦が多く出るので汁に負けぬよう少し太くなる。
0,1mの差は包丁仕事ではなく延しの厚さで決まる。
駒板に包丁を当てて、最初の1,2本は幅を見るがその後は見ない。
同じ力で駒板を抑え、同じ調子で包丁を落としていけば同じ太さの蕎麦になる。
2Kで延し上げた麺帯は8枚に畳んで60cm位の長さ。
今の自分は、これを切るのに5分かかる。
きちんと修業を重ねた職人は3分で切ってしまうだろう。
包丁仕事の良し悪しは駒鳴りの音で分かってしまう。
駒板に沿って包丁を落とすことを繰り返すと、スカコン、スカコンという音がする。
何十年と蕎麦を打ち続けてきた本職の駒鳴りはコン、コンと良い音。
スカという音の有る無しは、修業という苦労の隙間の差である。
難しそうに見える包丁仕事だが、三ヶ月もやればある程度はできる。
延し3年、木鉢10年と例えられるように、
蕎麦打ちで最も難しいのは、一番地味な水回しという木鉢での仕事。
蕎麦粉一粒一粒に水を含ませるために攪拌する作業である。
中高年の男性の間では蕎麦打ちが趣味としての人気が高い。
その動機は様々だが、華々しく見える包丁仕事に憧れて始めるご仁が多いと聞く。
蕎麦包丁は刃先の鋼によって値段がピンキリ。
青二鋼乱れ打ちの包丁なんぞは、ん十万もする。
道具から入る金持ちの素人さん向けの包丁でしょうな。
自分が今使っているのは、白二鋼の曲り柄で5万少々の代物。
弘法筆を選ばずで、そんなんで充分なのである。
毎朝蕎麦を切り終えると濡れ布巾で丁寧に汚れを落とす。
その後乾いた布巾で水気を取り木鞘に収めるのだが、
そんな作業をしながら結構包丁に話しかけたりしている。
蕎麦粉のカスが多くこびりついた日は、
すまんすまん、少し水回しの水が多かったね、切りにくかったしょ。
名刀は魂を宿すと言うが、蕎麦包丁もまた然りなのかもしれません。




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しなやかでごわつかず、前歯と下唇で挟むとふつんと切れ、
角がびしっと立っているが表面にはざらつきがあり、
手繰り込むに十分な長さもあって、喉奥を滑り落ちるときには、
蕎麦の香りと清涼感が味わえる様な蕎麦。
そんな蕎麦を食べていただこうと毎日打ち続けている。
だが、独学ゆえの迷いが常に付きまとう。
たとえば蕎麦釜の火加減。
容積60リッターの釜を沸かすのは3個のガスバーナー。
15分で沸騰させる火力がある。
蕎麦を茹でるには煮立った湯であることが大前提。
そこに蕎麦を投入すると、一瞬沸騰は収まるが間髪入れず沸き出さなければいけない。
だがグラグラ煮立っていれば良いというものではない。
芯に火が通る前に表面が煮溶けるような状態は蕎麦屋失格。
釜の湯は手前から奥へと対流する。
湯に放った蕎麦がゆっくりと三返りして茹で上がるのを良しとする。
今の様にガスが無かった時代は主に薪が使われた。
薪で最適な火力を維持することはなかなか難しいこと。
釜前と呼ばれた彼ら職人は店の扱いも良かったようである。
ともあれ、いろいろ試しながら最良なやり方を探していく。
蕎麦とは本当に奥の深い存在。
打てば打つほど無数の迷路が目の前に広がっていくような気がする。
根がいい加減な性格だから、『まっ、こんなモンでいいか!』と悩む前に妥協しちゃっているが、
もっと完璧を追い求めなければダメなんでしょうな。
年も年だしということでお許しを願おう。
さて、先週から暖簾を下げた。
浅黄色の小粋なもの。
おまえんとこは、やってるかやってないのか分からん、
というお客さんの文句に応えたつもり。
商い中は必ず出ているのでよろしくどうぞ。
蕎麦の薬味にはいろいろある。
葱の白いところを刻んだものとワサビはその代表格。
使い方も様々で、最初から汁に投入する派と、蕎麦を食べ終えてから蕎麦湯に入れて召し上がる派に大きく分かれる。
自分は葱もワサビも使わない。
蕎麦の微かな香りが無くなってしまうし、汁の味も分からなくなってしまうからだ。
まっ、これといった決まりごとは無いので好きに使っていただいて結構なのだが、
昔はワサビが簡単に入手できなかったこともあり、大根おろしが多く使われていたそう。
その中でも辛味大根は最強の薬味。
脳天をガツンと突き刺す辛さはワサビの比ではない。
しかもこの大根の偉いところはただ辛いだけではなく、
蕎麦本来の旨味や甘みを引き出すことにある。
汁に溶いても、はたまた蕎麦の上にちょんちょんと載せて食べるのも良い。
当店で使う辛味大根は、長野県から取り寄せた親田大根という辛味が強いものを使っていた。
カブに似た形で、辛さの中にも甘みが感じられる美味いものである。
ただ難点は送料などが高いため、近場でいいものはないかと探してたところ、
たまに寄らせてもらう紋別唯一のイタリアンの店『クアトロ』のマスターにある人を紹介された。
その人が『百笑たきのうえ』の高橋浩徳さん。
高校の教師を辞め、滝上で無肥料無農薬の農業に挑んでいる。
2,3日前、収穫したての親田大根を持ってきてくれた。
初めて作ったので蕎麦と合わさるとどんなモノになるか想像がつかない、
だから辛味大根おろし蕎麦を是非食べてみたいとおっしゃる。
店にはいろんな業者の方が来られるが、
こんなにきっぱりと、自分の品物と蕎麦との味の確認を言い出した人はいない。
なんだか嬉しくなってゴリゴリと大根をおろし蕎麦を茹で上げた。
『うまいなぁ~、この大根がこんなに蕎麦と合うとは思わなかった!』
感想を口にしながら蕎麦屋受けするなかなかの食べっぷり。
家庭菜園の延長みたいなもの、とご本人は言っているが、
ミニトマトなんかは味が濃く、非常に甘いと評判のよう。
今年は間に合わないが、欲しい野菜があれば受け付けるという。
来年の楽しみが一つできた。
海老天蕎麦は蕎麦屋の看板商品。
衣の華をパッと散らせたその姿は江戸前蕎麦の千両役者である。
当店で使う海老は2Lというサイズ。
どんぶりの端から尻尾がはみ出すほどではないが、
なかなかの見応え、食べ応えのある大きさである。
格好ばかりで頭ん中が空かすかのやつを『蕎麦屋の海老天』と言うように、
小指ほどの太さのものに三倍ぐらいの厚着をさせて出すところもあるが、
どこから噛みついていただいても歯が空振りすることは無い。
昔の蕎麦屋の海老天は、江戸前すなわち東京湾で採れる芝エビを使っていたそう。
大きくても10センチ位のやつを横に繋げて揚げる。
手のひらの上で形を整えて筏にするわけだが、
何匹繋げて揚げられるかが職人の腕前の基準の一つになったらしい。
時代は変わり、今はほとんどの蕎麦屋が養殖のブラックタイガーを使っている。
ベトナムやインドネシアなどの東南アジアが主な生産国。
日本の商社が現地で直接品質管理に携わっているということで安心して使っていたが、
半月位前の新聞報道で、あちこちの養殖場で原因不明の大量死が発生、
年末の需要が増える時期を控え争奪戦が始まっていると伝えられた。
次回の注文から少し多めに頼んでおこうかななんてのんびり構えていたが、
今日問屋に電話したところ、なんと一尾につき20円も値上がりしている。
おおよそ30パーセントの上昇。
海老天蕎麦一人前1180円なり、この価格で吸収出来る範囲をはるかに超える。
大企業が良くなれば中小の企業も良くなると政府は言う。
どう考えても真逆だろうと思う。
消費税のアップを前に、円安の影響でガソリン等すべてのモノが値上がりしている。
何年前だったか忘れたが、泣き言を言いながら政権を投げ出した政治家がいた。
同じ奴が祖父である岸信介の亡霊の力を得て蘇り、誤った方向にこの国を向けさせようとしている。
汚染水の漏出などが後を絶たない福島の現状を、すべてコントロールができていると言い放つ。
国民の操縦も思いのままと考えているのだろう。
ところがどっこい、そうはいかねぇよと反旗を翻すものは誰もいない。
自分が20代の頃、安保反対運動に象徴されるよう絶対権力に反抗する学生運動があった。
学生という特殊な環境を差し引いても、己のためだけではなく、
将来の子供たちのことを考えての行動だったと思う。
今の若者は新聞も読まず、TVの報道番組も見ないという。
携帯やスマホのゲームにうつつを抜かしているうちに、
一部の金持ちだけが暮らしやすいように世の中どんどん変えられているんだよ。
先週の木曜日、おおよそ三時になろうかという頃、お一人様ご来店。
見ると、なんと温根湯の名店『手打蕎麦すずき』の鈴木さんである。
一茶庵の蕎麦教室を卒業され、温泉で有名な街で端正な蕎麦を打ち続けている。
『あれっ!今日休みですか?』『休みじゃないんだけど休みになっちゃたんだよね!』。
聞くと、問屋が鰹節の種類を間違って送ってきたため汁が取れないと言う。
昨年からの『山の水族館』ブームの影響で連日混み合っている中、緊急の休みはさぞかし痛いだろう。
何時もは本枯れ鰹節の薄削りを使ってるそうだが、小型の鰹で作られた亀節が届いてしまったとのこと。
普通の蕎麦屋であれば、そんなに違いはねぇとやってしまうところだが、
閉めてしまうところが凛とした蕎麦を打つ彼の本領。
手打ち蕎麦屋の冠言葉、『こだわり』は嫌いな言葉である。
美味い蕎麦をお出しするために、原材料や手法にこだわるのは当たり前。
重要なのは何時如何なる時もその考え方を保ち続けること。
食べ物商売をやったことのある方であれば解ることだが、
採算ラインは『こだわり』を徐々に曖昧にする。
押し留めるのは蕎麦や汁に対する矜持。
つまり自分の生き方、考え方への『こだわり』だと思う。
本音で話すことができる同業者は滅多に居無いが、
鈴木さんとはそんなところで共鳴できる。
国道39号を北見から旭川方面に走って温根湯市街地に入って直ぐ、手打ち蕎麦ののぼりが左側に見える。
ぜひ一度寄ってみてください。
『こだわり』と同様に最近の飲食店でよく使われる言葉『最大限』。
たとえば、幌加内産の蕎麦粉の旨味を最大限引き出しました、なんて使い方をされる。
ヘンだと思いませんか?
食材の持つ特色やおいしさをとことん追求するのは職人として当たり前のこと。
わざわざお客さんに言うことでもないし、ましてや宣伝文句に使うなんてぇのはもっての外。
夕方のニュースで、大阪の一流ホテルがトビッ子を赤色キャビアと嘘をついて出していたそう。
責任者がテレビの取材に対し、食材に対する認識が甘かったとほざいていた。
儲けのために『最大限』ニセモノを使うことに『こだわり』ました、と言えば解りやすいものを。
 
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