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嵐のようなお盆の一週間が終った。
12,13日の水木曜日はパートさんたちの都合もあって、自分を含めての二人体制。
そんなに混まないだろうとの予測で臨んだが大外れ。
特に水曜日は空き待ちのお客様が、なんと18名になるほどの大混雑。
大盛、特盛を含めて約30人前の蕎麦しか用意していなかったので、
早々と12時半に売り切れ仕舞いとなってしまった。
楽しみに遠くからいらした方もいただろうに、本当に申し訳ない。
木曜日も似た状態が続き、いよいよ今年のお盆本番の14,15,16、金土日の三日間。
蕎麦は約50人前の2キロ玉三つ計6キロを打つ。
元従業員のお隣の奥さんにも応援を頼み万全の体制で臨む。
いや〜入りましたね!
金曜が44名様、土曜が45名様、日曜が46名様は開店以来の新記録である。
腕も腰も頭もバンバン。さすがに疲れた。
全国各地からいろいろなお客様が見えられたが、
東京から旅行で来たという中年の男性の一言が印象的だった。
「こんな山の中で、こんな美味い蕎麦が食べられるとは思ってなかった!」
褒められてるのかなんだか分からないが、褒められたんでしょうな。
良い店の条件のひとつは自分の店が対応できる限界を知ることである。
この店のギリギリは40名。
それ以上になると丁寧な仕事が出来にくくなる。
数をこなせばいいというものではない。
来ていただいたお客様には、色々な意味で満足して帰っていただきたい。
そんな姿勢をこれからも持ち続けて行こうと思う。
月曜の定休日はゆっくり休んで居たいところだが、
牛丼の仕込みと、物置の整理、店周りの雑草抜きが待っている。
仕事があるうちが幸せと思い頑張らなければならぬ。
さてさて、先日の安部首相の戦後70年談話。
聞いていて思わず「言っていることと、やろうとしていることが違うべや!」
とテレビに向かって野次をいれてしまった。
巷間によく言われている、岸信介という亡霊に操られている人形そのもの。
日本の植民地支配の以前に欧米の植民地の歴史があったなどと言ってのけるのは、
その面目躍如の極みである。
散々美辞麗句を並べたてまくったが、
要約すれば、これからのこの国は世界平和のためならば、
憲法九条はそっちによけといて、アメリカと一緒に戦争という手段を取るかもしれません、
だから過去の戦争についても謝ることはもうやめにします、
そこんところ世界のみんなよろしくね、ということだろう。
それに比べて、ドイツのメルケル首相の一言が胸の奥底にグサリと刺さる。
「歴史は変えられない」と。




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当店の看板は、「だて様」の職場の先輩である書道家のSさんの揮毫。
オンコの一枚板に書きしたためたものを「だて様」が看板に加工してくれた。
言わばこの店の宝である。
その看板が7年という歳月の経過により、
表面のニスの皮膜が剥がれたり、文字の墨痕がぼやけたりと劣化しつつある。
修復しなければならないなと毎朝の掃除のたびに思う。
その反面、自然のままに任せようという考えも自分の中に根強く存在する。
この看板が朽ちる時は、「にの字」が朽ちる時。
そんな商売の幕の引き方もかっこええではないかと。
砂澤ビッキというアイヌの彫刻家がいた。
数々の素晴らしい作品を残している。
札幌の芸術の森だったかと思うが、屋外に展示されたものがあった。
何本かの柱状のものの一本が腐食により倒壊した時に、
北海道新聞にこんな記事が載ったのを記憶している。
ビッキの作品は自然の木を使ったもの。
風雪が彫刻を蝕み、やがて朽ちて行くのも自然の摂理。
だからむやみに修復などはしないでそのままにしてくれとのビッキの遺志に従い、
倒れたままの状態で公開することにしたと。
自分の予想では看板が朽ちるより早く己が朽ちるのではないかと思っていた。
だが意外とこの体は弱りながらも何とか生き続けている。
もう少し体を労わりながら仕事をしなさいよという神様のサインなのだろう。
お盆が過ぎて少し暇になったら看板の墨入れをしようと思う。
さて先週の土曜日、仕事を終えて二階に上がりテレビをつけると、
「モリエール」の「 中道シェフ」が出ている番組をやっていた。
道内で唯一、ミシュランの三つ星をもらったフランス料理の名店。
その厨房は何とも狭い。
そんな中で6名ぐらいのスタッフが体をくっつけ合いながら料理を作る。
「中道」さんは言う。
この店の料理は自分一人で作るのでは無くチーム全員の仕事である。
自分が作りたい料理の味を、携わる全ての者が共有し、
限られた時間の中で全体で表現する作品であると。
優れた料理人が次から次に独立するのも頷ける。
翻って自分はどうか。
厨房の狭さだけは引けを取らぬが、
彼のように高尚な考え方はあまり無い。
ただ口うるさいだけでは駄目だと反省。










蕎麦打ちの仕事の中で一番難しいのは、
蕎麦粉に水を加える水回しという作業。
蕎麦粉というやつはあまり性格がよろしくない。
自分がもらった水は自分だけのものと言わんばかりに、
他の水の回っていない粉に余分な水を与えないのである。
それを木鉢の中で攪拌し、粉一つ一つに水をくっつけるのが水回し。
今使っている蕎麦粉の適正加水量は43パーセント。
ところが最近のこのジメジメとした暑さ。
43パーセントからほんの数滴差し引かなければ適性加水にならない。
天気予報によるとこんな天気はもう少し続くようなので、
当分の間、微妙な調整に頭を悩ます毎日である。
半月ぐらい前のこと、裏口のドアを開けて外に出ようとしたところ、
高さ40センチ程の段差で、着地した左膝が伸び切ってしまうような状態になってしまった。
最初は痛みというよりは膝の違和感が残る。
4.5日たった頃から力を入れると痛むようになってきた。
蕎麦打ちは、どの作業でも結構膝を使う。
特に捏ねの仕事では、51キロの自分の全体重を麺体にかけて練り込むため、
膝に相当の負担がかかる。
湿布を貼り、包帯をきつめに巻いてみて様子を見る。
だんだんじんわりと痛みが強くなり、階段の上り下りが辛くなってきた。
多分靭帯を傷めたなと分かっていたが、
念のための検査をしてもらうために同級生が院長のK整形外科に行く。
診断は左膝前十字靭帯損傷による膝関節炎。
骨には全く異常が無く、レントゲン写真を見ながら、
「二宮クン、いい骨してるね、どこもすり減っていないし、まだまだ大丈夫!」
「ヒアルロン酸の注射、一発打っていくか?」と
ぶっとい針の付いた注射器で膝の間に注射を打つ。
ヒアルロン酸といえば最近の健康食品のCMで、
コンドロイチンやコラーゲンなどと並んでよく聞く言葉である。
そんなものを口から入れて摂ってもウンコになって出るだけ。
年寄りを騙くらかすような商法はけしからんと常々思っていた。
まさか自分がそのようなもののお世話になるとは、
老いを感じるのはこんな時なんですな。
一月前の肩の怪我といい、今回の膝のことといい全て不注意によるものである。
心して仕事をしなければならん。



先週の月曜の定休日、海の日という訳のわからぬ祝日である。
ヨガ教室も休みなのでどこか行きたいと朝から奥方が言う。
天気は快晴、予報は28度位まで上がるそうでジリジリ暑い。
別に行き先は決めずに網走方向に車を走らす。
網走道の駅でトイレ休憩。
観光客で駐車場は満車状態、施設の中も人でごった返している。
紋別の道の駅との差を感じながら斜里方面に向かう。
「神の子池」というパワースポットがあるというので行って見ることにする。
途中昼時になったので、以前から気になっていた農家さんがやっている「らいうん」という蕎麦屋を探してみる。
所々に案内の看板はあるものの非常に分かりづらい。
自分の店も似た様な立地なので文句は言えません。
人家も途絶えた農道をくねくね曲がりながらようやく辿り着いてみると定休日。
残雪がまだまだ多い日本百名山の一つ、斜里岳の勇姿に気を取り直し清里町を目指す。
いったん蕎麦モードに入った頭の中は止められず、
「手打ち蕎麦」の看板に吸い寄せられて、清里町「T」さんの駐車場に入ってしまった。
店の外壁にはミッキーとミニーの平べったい人形が飾られ豆電球もまわっている。
嫌な予感はしたが、北海道新聞の広告で名前は知っていたので入店。
時間は1時半を少し回った頃。
先客はカウンターにライダーが1名と小上がりにご夫婦連れの計3名。
小上がりの座敷が広く、20人ぐらいは座れそうだがテーブルの上には汚れた食器が散乱。
こりゃはずれだなと思いながら空いていた卓を見つけて座り、
仕方ないので「せいろ」2枚を注文する。
聞きにきた店主と思われるお年寄りも洗濯物の生乾きの臭いが強烈に漂う。
何とか喉を通るものが出てくるようにと祈る。
やがて到着した「せいろ」はなんと全部が5センチ程の長さしかない。
洗いが不十分なのかヌメヌメして不味い。
苦労して食べていると蕎麦湯を持った店主がまた現れる。
「わざとにこんなに短く作っているの?」と聞いてみた。
するとこれは斜里産の粉をつなぎ1割で打っている証拠であるとのたまう。
他の蕎麦屋はつなぎの小麦粉をもっと入れて儲かっているが、
ウチは1割にこだわっているからさっぱり儲けが無いと言う。
「へえーそうなんだ、大変だね!ごちそうさん!」とそそくさと後にする。
斜里、中標津線を30分ほど走ると「神の子池」の案内看板。
砂利の林道を登って行く。
休日なので何台もの車とすれ違うのだが、
今時の若い方達は砂利道の走り方を知らないのか、
速度を落とさず下りのコーナーに突っ込んでくるので、何度もヒヤヒヤする。
やがて着いた「神の子池」は人が一杯で「人の子池」状態。
犬を連れた家族やら、この暑いのにべったりと手を繋いだカップルやらで大混雑である。
池そのものは緑色の水の中に巨木が朽ちることも無く沈み、
オショロコマが泳ぐ中中の景観である。
だが何せこの騒々しさ。
連れは「感じる!感じる!」と言いながら感激していたが、
自分は元からそいいうものに興味は無いのでとっとと車に戻る。
パワーを感じるということならば、途中に寄った「さくらの滝」が凄かった。
ちょうど桜鱒の遡上の時期。
高さ3mほどの滝を何度も何度も跳ね返りさせられながら上ろうとしている。
種の保存の本能ゆえの行動とはいえ、言葉を失う様な光景だった。
もし自分が桜鱒だったら、一二度失敗したら「もういいや!」と早々と諦めて、
もと来た川を流れに身を任せて戻っているだろう。
桜鱒や鮭は偉い。






三連休の中日、7月19日の日曜日のこと。
札幌から14名で伺いたいとの予約の電話が入っていた。
日曜の昼時、増してや連休である。
相当の混雑が見込まれるので最初はお断りしようかなと思った。
14名様ということは貸切にし、予備の椅子を引っ張り出してようやく座っていただける。
11時の口開けなら何とかなるかもしれないが、
それ以外の時間帯であれば全員が同時に入店することは不可能と説明すると、
バスで行くので中で待機し、空いた順に食べることが出来れば構わないとおっしゃる。
そこまで言ってくれるのならお断りするわけにはいかぬ。
朝2時半に起きて2キロ玉を3つ打つ。
大盛りの注文が混ざったとしても50人前の蕎麦である。
天気は快晴、ジリジリと暑い。
暖簾を出す前から3台ほどの開き待ちのお客様。
蓋を開けてみると特盛の注文が相次ぐ。
特盛は一人前の倍の量300gである。
どんどん蕎麦が無くなり、札幌の14名様は到着しない。
正午少し前に特盛お断りの指示を出す。
もともと蕎麦という食べ物は小腹を満たすもの。
一日三食の内の一食ではなく、江戸時代の昔から趣味食の位置で発展してきた。
笊に薄く盛られた蕎麦を三口ぐらいでささっと片付け、
ごっそうさんと出て行くのが粋と言われてきた世界である。
だが、ここ北海道でそんな感覚で商売をすると三日で潰れる。
しっかりとお腹を満たす食べ物でなければ受け入れてはくれない。
12時を回った頃混雑はピークになる。
空き待ちのお客様が10名を超えたところで大盛も止めざるを得なくなる。
そうなると天麩羅の注文が一気に増え出す。
蕎麦だけでは物足りないという方が、如何に多いかという証拠である。
蕎麦釜やフライヤーの周りの温度は40度を超える。
元々汗かきの体質ではないが、汗も出ないほど体力を消耗する。
やがて御予約の14名様ご到着。
20名以上のお客様が車の中でお待ちの状況での海老天、ごぼう天の連続。
満席のまま天麩羅を揚げ続ける。
やがて3人、4人と席が空き札幌の14名様で貸切状態になる。
時計の針は1時半を少し回った。
日曜日にしては異例の早さだが、売り切れ仕舞いの札を出す。
その後も続々と札は見るものの「もう駄目ですか?」と確認をする方達が顔を出す。
遠くから楽しみにいらっしゃったのに本当に申し訳ない。
店主があと10歳ほど若ければ「40分ほどお待ちいただければ蕎麦を打ちます」と、
手早く新たな蕎麦を作ってお出しできるのだが、生憎そんな体力はもう無い。
最後のお客様を送り出すと一気に疲れが押し寄せる。
総数42名様のご来店。
入れずに帰られた方を含めると60名以上の数になるだろう。
今や手打蕎麦屋の主流である「自家製粉」をやっていないこんな店にである。
「自家製粉」は蕎麦屋の理想である。
だがそれを追い求めると果てしも無い道に突き進むことになる。
自分はとっととそれを諦めた。
風味の落ちない間隔で注文することで製粉はプロに任せることが出来る。
余裕ができた時間で考えたことは蕎麦と遊ぶこと。
そんな店の方向感覚が多くの方に受け入れられている要因かもしれない。
来月はお盆。
1年で一番の混雑の時期を迎える。
2キロ玉を4つ打たなければ間に合わないか。







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